『へんげ』『大拳銃』『DUST#3』『わたしの赤ちゃん』『ラップ現象』


「へんげ」関西上陸記念のトークライブ。楽しかった。
会場はライブシアターなんば紅鶴、スゲー空間!なんだかただならぬ予感がしつつイベントスタート。
■登壇者:大畑創(『へんげ』監督)、森田亜紀、信國輝彦、寒河江弘 ■司会:花井なお、安斎レオ
『DUST#3』(2011/監督:田口清隆) 美術造形:寒河江
『わたしの赤ちゃん』(2010/監督:磯谷渚) 主演:森田亜紀
『ラップ現象』(監督:大畑創) 

まず司会の方二人と、監督と寒河さんでトーク寒河さんという方は話が上手い、どんどん「へんげ」のハードルを上げて行く、客を煽りまくり。そして「DUST#3」の上映。

「DUST#3」は寒河さんが参加している作品。主演の方たちと飲み屋で酒飲みながら物語のプロットを考え「今日台本作って、明日撮影できるものを考えよう」をコンセプトに、その場で話を組み立ていったのだとか。結局それは日程的に無理があるので、2日間で寒河さんが特殊造形制作とロケハンを、主演の方が出演者集めに、それぞれ奔走し、2日間の撮影期間で取り上げたそう。この作品は「へんげ」に参加することで触発されて作った自主映画とのこと、「『へんげ』がなかったら、この作品はできてなかった」と繰り返し言う寒河さん、大畑監督へのリスペクトがビンビンでした。ストーリーは、何人もの人間が悪の組織に捕われて、兵士にされるべく人体を改造されるが、男女2人だけがそこから脱出する、しかしそこに改造されて悪の組織の一員になった元仲間が2人を捕獲すべく追ってきて…っていう感じ(だよね?)。バトルシーンのアクションが凄い映画だ。主演の人の回し蹴りは昔の千葉ちゃんを思い出させる。敵になった元仲間の男の造形がなかなか良い、半分植物の人間。

そして、他の2人も出てきてトーク。で、「わたしの赤ちゃん」の上映。

「わたしの赤ちゃん」はショッキングな良い映画だった。大畑監督はこの映画を見て森田さんを「へんげ」の主演にオファーしたとのこと。「へんげ」の恵子役は森田さんのアテ書き、会ったこともない段階で、凄いね。ストーリーは、長女が次女(森田さん)と一緒にいる時に事故で流産してしまう、数ヶ月後次女が子供を出産するが、長女は、次女が生んだ子供の父親は自分の旦那ではないかと疑っており、また自分の流産も次女の策略ではないかと疑ってくる…果たして真実は?みたいな。トークでも言ってたけど、内容的には昼ドラのドロドロした身内系の話を短編映画に凝縮した感じ。何個か激イタのシーンがあります、「うお!」ってなる。そして衝撃のオチ、爆笑。この映画は最初から最後まで本当に面白いし、その分オチでの衝撃も半端ないので是非多くの方に見て頂きたいですね。

トークを挟んで「ラップ現象」の上映。

「ラップ現象」は一時期YouTubeにアップされていたらしい。大畑監督が「自主映画を志す人が見たら元気になれる作品」って言ってた、つまりヒドイ出来ですよと。確かにこれは衝撃作だ、正直ワケ分からんかったw。主演(主演っていうのか、あれは?)は坊主頭の大畑監督自身。ラップ現象っていうからホラーかと思ったけど、ラップっていうのはサランラップのことで…。サランラップは長いし強いし弱いし…みたいな内容。文字にすると意味不明だと思うけどホントにそういう内容の作品。

全体的に大満足のイベントだった。ワンドリンク付きで1500円、イイネ!監督と挨拶もできました。凄く腰が低くてシャイな方だと思った、素敵です。


20時30分からは七藝で「大拳銃」「へんげ」の上映。終映後はトークライブあり。

「大拳銃」は驚きの出来だった、これ凄いよ。画のタッチが既に名作感漂いまくり、画面のレイアウトが凄く丁寧で素晴らしいです。個人的には黒沢清を彷彿とさせるなと思ったんですが、どうなんでしょうか。出演してる役者陣も十分なリアリティで良かった。個人的に好きなのはヤクザ役の男、ヤバい奴ほど敬語でツメるというのを良く分かってらっしゃる、実際あんな奴いたら怖いよな、さらっと無理難題を押し付ける感じがヤバい。主人公がどん底の状態になった時に…爆発します。凄く燃える展開だと思う。でもその爆発する時のテンションも、描写は意外と冷めてる感じ?その辺も黒沢清を思い出した、「復讐 運命の訪問者」とかあの辺りの乾いた復讐劇になっていると思う。終盤の工場に警察が押し寄せてきて〜のワンカットのクダリはすごく感心した。ラストも良い!

「へんげ」。遂に来たね、この時が。信頼筋からの情報を元に期待しまくった結果、昼のトークライブにも参加し、「これでも面白くなかったらどうしよう」と思ったが、それは杞憂だった。この映画は凄いよ。「大拳銃」で光っていた画面構成の妙はさらに研ぎすまされて、ボンヤリ画面を眺めているだけでもため息が出るような格好良さだ。ここまで豊かな画作りが自主でできるなんて信じられない。予告でも見れる相澤さんの痙攣の演技は圧巻、痙攣しすぎた結果タンスに乗っちゃったりする、スゴっ!森田さんの演技も素晴らしいと思ったよ、彼女の旦那を見つめる眼差しには、はっとさせられる。とても穏やかな目つきで災難に見舞われる旦那を見つめるカットが印象的。うーん、再三ネタバレするなって念押しされてたので詳しくは書けない、でも予告みたら検討つくよね?w

で、トークライブ。司会はもちろん寒河さん。質疑応答あり。予算については言いたくない様子、ボランティア同然でプロが仕事を引き受けてくれたんだろうな。夫婦が交わす特殊な言葉は、撮影中はロシア語だと監督が言っていたらしいが、実はある言葉を並べ替えたものだそう、なんだろ。個人的に興味深かったのが、塚本晋也の「鉄男」の影響は一切受けておらず、影響を受けたのは「ザフライ」なんだってこと、なるほどね、監督のフェイバリットは「ロボコップ」で、「へんげ」の劇中で妻が旦那に注射を打った後の動きは「ロボコップ」オマージュなんだってさ。